動画のコメント欄に日付 → 自分の死亡予定日が書かれている

フック(HOOK)—いつもの動画のコメント欄に、あなたの「死亡予定日」が並んでいたら、どうする?スマホを置けなくなるよね。俺もそうだった。

通勤電車で、いつもの動画を流しながらコメント欄を眺めていたら、無造作に並んだ四桁の日付が目に入った。2025/09/12、2025/10/03、2026/01/01――絵文字もなくただ日付だけ。変だなと思ってスクショを撮った。スマホのスクショはすぐにフォルダに溜まるが、その一枚が胸に刺さった。友達に送ると「あ、それお前の誕生日じゃん」と軽く返された。冗談にしては嫌な空気が残った。「俺、昔冗談で葬式メモ作ったことある」って口にして、笑ったふりをしたけど、自分で言ったその一言が耳に残る。

家に帰ってPCの前に座り直した。コメントは規則的に増えていくように見えた。投稿時間が等間隔で、名前はバラバラ。スパムか誰かの嫌がらせか——そう思って、投稿のHTMLを少し覗いてみる。リンクが一つだけ目立っていた。小さなURL。クリックすると、共有カレンダーの簡素なページに飛んだ。URLには俺のハンドルネームの断片が入っている。そこには俺の名前で登録されたイベントが並んでいて、タイトルは「最期の式:2025/09/12」。スクリーンに映るのは、赤い印の付いた一つの四桁日付だった。

あの晩、自室の下書きフォルダを漁った。古いテキストファイルがいくつもある。最終メッセージ.txt。中身は半分冗談の文と、いくつかの日付の羅列。そうだ、数年前に友達とふざけて「もしものリマインダー」を作って、公開リンクをテストで投げたことがある。覚えていないわけじゃないはずなのに、詳細は曖昧だ。ログイン履歴を確認すると、当時使っていた古いスマホの記録が残っている。多端末ログインの痕跡。思い出すようで思い出せない、そんな感覚が胸を締め付ける。

次の日、カフェのフリーWi‑Fiでさらに深掘りした。コメントのソースを見ると、投稿元には「calendar-sync」「auto-scrape」みたいな識別子が混ざっていた。名前だけならスパムで済むが、このサービスは公開カレンダーや共有メモを外部から拾って、日付を抽出して自動でコメント化するらしいという噂を見つける。俺の公開カレンダーに「最期の式:2025/09/12」と書いてあったのは確かだ。だがそれを書いたのは俺だ。しかも、公開にしてしまったのも自覚がない。心臓がどきどきした。誰かが俺を狙っているんじゃない。多分、もっと無機質な仕組みが働いている。

その夜、古いPCの下書きフォルダで見つけた別のファイルに目が止まった。「葬式リマインダー.ics」――拡張子まで残している自分が信じられない。ファイルの中には項目ごとの説明と、時間と場所、不用意なメモが並んでいる。「冗談で作った」「棺の色は黒」「最終メッセージを残す」とか、軽い気持ちで打ち込んだ文がそのままだ。しかも共有設定が「公開」になっていた。昔の俺はテスト中に「共有リンク」を生成して、それをどこかのチャットに投げていた。そのチャットのスクショも残っている。スクショには、青いリンクと俺の名前入りの文字列。ここまで来ると、背中がぞくりと冷たくなる。

翌朝、コメント欄を見に行くと、新しい日付が一件増えていた。投稿時間はいつもの等間隔より少し遅い。運営の自動バッチが拾ってきたのか、そのサービスのキャッシュが更新されたのか。思わず、「これ消せるのか?」と独り言を言ってから、公開カレンダーの設定画面に入り、共有を取り消した。消したはずのカレンダーは、自分のアカウントから消えた。安心したのは一瞬だけ。コメントは依然として表示され、削除の反映にはタイムラグがあるらしい。スマホのスクショ群の中に、消す直前に撮った「投稿一覧」の画像が残っていた。そこに写っているのは、俺が昔作ったメモと、サービスの識別子、それから投稿が始まった日だった。

夕方、最後のスクショを見返していて気づいた。コメントを自動投稿しているアカウント名は、いつも違うが、IDの末尾に同じ三文字が入っている。それは、自分が昔テストで使った短縮URLのハッシュの一部だ。俺が投げたリンクは、自分の公開メモを指していた。それを外部のクローラーが拾って、日付だけを切り出してコメント欄に投げていた。つまり、呪いでもストーカーでもない。自分が昔に残した「冗談」が、忘れられて外で生き続け、ネットの機械がそれを拡散していたんだ。胸の中の冷たさは、憤りに変わったようで、どうにもならない諦めにも見えた。

結局、俺はカレンダーを取り下げ、下書きとスクショを整理し、公開リンクを全て無効にした。数日後、コメント欄の古い日付は徐々に消えた。だが、スマホのあるフォルダに残る一枚のスクショは消せない。そこには、自分が冗談めかして書いた「最終メッセージ」と、投稿者名の末尾に一致する短いハッシュが並んでいる。心のどこかでまだ問いかける。もし俺がその日を本気で書いていたら、誰が責任を取るのかと。小さな手がかりは残したつもりだった――投稿の間隔、共有リンクのスクショ、そして最終メッセージのファイル名。全部、自分が撒いたものだった。

解説(中学生でもわかるやさしい説明)
– 要点:動画のコメント欄に並んでいた「日付」は、誰かの悪意や呪いではなく、ネット上で公開されていた自分の予定(カレンダーやメモ)を外部の自動ツールが拾ってコメント化したもの。主人公は昔「冗談」で公開設定にしており、そのまま忘れてしまっていた。自動化ツール(bot)が公開データをスクレイピングして、日付だけを切り出して投稿していたんだよ。

詳しい解説(技術と仕掛けの流れ)
– どんな仕組みか:公開されたカレンダーや共有メモはURLさえわかれば誰でも参照できることがある。外部の自動化サービスやクローラー(スクレイピングbot)は、公開ページを巡回してコンテンツを取得し、そこにある日付やテキストを抽出して別の場所(今回は動画のコメント欄)に自動で投稿するよう設定されていることがある。
– 主人公が気づかなかった理由:昔の自分がテスト用に生成した「共有リンク」をチャットに投げ、そのまま公開にしていた。長い時間が経つと「公開にした」記憶は薄れ、下書きファイルやスクショだけが痕跡として残る。多端末ログインや古いデバイスの履歴が、その公開の証拠になる。
– 伏線の読み方(物語内の手がかり):
– スマホの古いスクショ=過去に共有リンクを投げた証拠
– 規則的な投稿時間=botによる自動投稿の特徴
– 自分の名前入りの公開リンク=公開設定ミスの決定打
– 下書きの「最終メッセージ」=本人がその日付を書き残している事実
– コメントのID末尾や投稿ソース=外部サービスの識別子で、スクレイピング元を特定できる手がかり
– なぜ一見「怖い」印象を受けるのか:未来の日付が並ぶと、「予言」や「呪い」を想像しやすい。さらに投稿が誰かによる嫌がらせのように見えると、被害妄想が働く。でも現実は、技術的な自動化と人の忘却が重なったケースが多い。
– 注意点(教訓):公開リンクや共有設定は扱いに注意。冗談やテストでも「公開」にした状態が長く残ると、外部サービスに拾われて思わぬ形で拡散されることがある。

仕掛けの正体(作者メモ・要約:約120字)
コメント欄に並ぶ日付は超常ではなく、外部のスクレイピングbotが公開カレンダーや共有メモから日付を抜き出して自動投稿したもの。主人公が過去に公開した冗談の予定を忘れており、技術的ミスと記憶の欠落が重なった事件。

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