招待メールの残響

夜中にスマホが震えた。枕元の画面に「イベント写真が共有されました」という通知。未読メールが山になってるのはいつものことで、でもこの通知の差出人は写真共有アプリ。件名だけ見て、まだ寝ぼけたまま画面をタップしたんだ。

昨日のことを思い返す。友人から「昨日は来てたよね?」って既読スタンプだけが残ってるチャット。カレンダーには「終日:外出」と書いてあって、自分でそんなこと書いたか覚えがない。俺は昨夜、あの簡素なホールにいたのか――っていう違和感が胸の中で膨らんでいく。

アルバムを開くと、タイトルに日付だけ。写真は薄暗いホールの様子が続く。長椅子が整然と並び、白い壁に蛍光灯の冷たい光。人は黒っぽい服を着てるのが目立つけど、最初はそれを「夜の控えめな服装」だと思い込んだ。自分の顔が写ってるカットもある。笑ってるように見える一枚に、手の動きが写ってる。

でも写真の空気が違った。皆がただ座ってるだけで、笑顔が少ない。ある写真では誰かが花束を持ってる。別の写真では、前方に小さな祭壇のようなスペースが写っていた。俺はそのとき、少し頭が混乱して、視界がスローになる感覚を覚えた。スマホの光が眩しくて、写真の色が現実より濃く見えるんだ。

チャットをもう一度見返した。友人のメッセージには返信がついてる。「来てたよ、最後まで」って短い一行。だが送信者は俺のアカウント名だった。既読はついてる。誰かが俺のアカウントでやり取りしてる。画面の端で、通知が静かに震え続ける。

ページをめくるたびに、視線が一点に釘付けになった。壇上に置かれた額縁。写真アプリの焦点がそこに合ってる。額縁の中の写真はブレてるけど、そこに映る顔には左のほくろと笑いジワがある――確かに、あの顔は俺の顔と一致していた。指が震える。記憶の中の自分と、写真の中の状況がどうしても結びつかない。

最後の一枚は近接で、額縁とその周りに捧げられた花がはっきり写ってた。説明文も見えた。自動生成のタグが小さく表示されてて、「参加者:○○」――○○は俺の名前。通知は確かに「イベントの参加者向けに写真が共有されました」って書いてある。俺のカレンダーのその日だけが、妙に整いすぎている。

指をスワイプして消そうとしたとき、画面の下から小さなポップアップが現れた。「この人物をタグしますか?」候補の名前は俺のフルネーム。バイブが小さく震えて、部屋の空気が冷たくなった。招待メールの文字列が画面に残ったまま、俺は声にならない声を出した。誰かが、俺に向かって合掌している写真がそこにある。

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