タイムラインの逆行 → 投稿が過去から順に消えていく

夜中、スマホから通知音だけが鳴った。画面を開くと、タイムラインの一番古い投稿が消えてた。最初はサーバーのバグだと思って、スクショを撮って友達に送ったんだ。「見える?」って。返事は薄かった。通知だけが続いて、たまに鳴るその音が胸に引っかかった。

翌日も同じ。古い投稿が順番に、過去から消えていく。保存済みを確認する癖があるから、一つずつチェックしてた。あの謝罪の投稿、昔の約束、同級生の集合写真――指が写り込んでるやつもあった。保存済みにはまだ残ってるはずなのに、写真を開くとフレームの隅がぼやけていく気がした。

友達に聞くと、「見てないよ」とか「見えない」と返ってくる。リアクションが薄くて、会話がどこかすり抜けていく感じ。電話をかけても声はどこか遠い。誰かを責めたくなるけど、送ったはずのメッセージの既読がつかない。タイムラインの逆行 → 投稿が過去から順に消えていくって言葉が頭をぐるぐるする。

ある夜、削除確認画面がポップアップした。いつもは面倒でスルーするだけのそれを、ふと見つめる。消しますか、はい/いいえ。僕は「いいえ」を押さなかった。押せば止まるのかもしれない。でも止めたら何が戻るんだろうって怖さもあった。ボタンに触れなかった自分を後悔する前に、通知音がまた鳴った。

古い写真の一枚、同級生の集合写真の隅に小さく写った自分の指が、次第に消え始めた時、初めて怖くなった。写真は思い出の土台だ。土台が先に崩れれば、上に載ってた記憶は宙に浮く。友達の反応が素っ気なくなっていくのは、彼らの中から僕の位置が抜け落ちていってるからだろうか。

それでも僕は過去を辿った。メッセージを読み返し、古い約束の時間と場所を口にして、誰かの名前をつぶやいた。人はなぜか僕の言葉に反応しない。誕生日の投稿だけは最後まで残った。いちばん新しいものほど支えになると思ったけど、それもいつまでか分からない。

夜中の通知音は、消去が進む合図みたいに響いた。保存済みのフォルダを開いては、ページが一枚ずつ白くなるのを見た。削除確認画面を毎回見て、結局スルーする。そのとき自分の足元がすべるような感覚があって、手元のスマホが重く冷たく感じたんだ。

最後に残ったのは「今」の投稿だけだった。僕はスマホを握りしめて、短い一行を打った。送信した瞬間、通知音が高く鳴り、画面の明かりが消えた。誰も振り向かなかった。誰もあの日を知らない。

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